押井守監督作品『アヴァロン』ポーランド ロケ地探訪(1)

今回は、押井守監督の実写作品『アヴァロン』のロケ地へポーランドへ。

※数年前にニコニコチャンネル(ユーザー投稿版サービス終了)で掲載したもの再編集版です


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地下鉄に入る前の場面のロケ地。映画と同様に映っているのが Palace of Culture and Science (文化科学宮殿)

■はじめに
旅の前に、映画『アヴァロン』の各種解説を読む。大抵の場合「アニメーション出身の押井監督が実写を手がけた点」さらに、「ポーランドという海外の地で撮影した点」が真っ先に挙がっている。ただし実際のところ、実写やポーランドというキーワードの深掘りは難しい。ほぼ、押井監督や一部スタッフの振り返りや、当時のメイキングビデオから、とっかかりを得ている気がする。作品自体がそもそも幻想的なこともあり、なかなか実感が湧かないので、制作者の受け売りになってしまう。ワルシャワ市内の撮影は、どんな雰囲気の場所なのか興味があった(実際は、ヴロツアフ、クラクフでも行われている)。
今回、例のごとく訪れてみた。往年の名作ポーランド映画である『地下水道』『灰とダイヤモンド』『大理石の男』の暗いイメージとは異なる、さらには、『アヴァロン』で感じた無機質感とも異なる、ちょっと暖かい空気があった。そして、少なくともワルシャワ内のロケ地は、かなり手軽に行ける場所にあった。これからロケ地へ行く人の何かしら有益な情報になっていただければ嬉しい。行かない人も、映画をテーマにした旅の雰囲気を楽しんでいただければと思う。

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映画の歩き方®

ポーランドアヴァロン』ロケ地研究編
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■そもそもアヴァロンとは?
押井守監督作品。氏の代表作は『攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー』シリーズ『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』『スカイクロラ』。筆者的には『ご先祖様万歳』も捨て難い。近年は何作か実写を手がけていらっしゃるが、『アヴァロン』が実写としては初であった。ジェームズ・キャメロン監督など、海外の複数の監督にインパクトを与えた作品である。

 

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アヴァロンポーランドの関係
「本物の戦車で撮影させてくれる国」であることが決め手となり、押井監督は、ポーランドでの撮影を決めた模様。役者もポーランド人であり、日本人は登場しない。言語もポーランド語だ。

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■著者紹介
KIYASUWALKER(きやすうぉーかー)
メディア史の勉強と創作活動が好きです。好きな映画は、ナチス前のドイツ映画、戦後の日本映画、そして、スターウォーズ。問い合わせは、コメント欄か、twitter

@kiyasuまで。

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【01.大まかなロケ地と旅程】

日本から飛行機で向かいました。バスでワルシャワ市内へと行き、その後は徒歩です。滞在時間は、ほぼ1日。参考にしたのは「居ながらシネマ」さんのHP。

【02.治安とか言語とか諸々】

治安
安全です。

言語
ポーランド語です。ただ、お年寄りでなければ英語も通じます。

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【03.出発編&バスを降りると直ぐロケ地が】
空港からのワルシャワ市内へのアクセスで、安上がりなのはバスである。中東に行くと男性だらけの印象を受けるが、この街は女性が多く見えた。男性は働いている為か、美形の方が多いので目が女性へ行ってしまう為か。

さて驚いたことに、バスを降りた場所そのものがまさに『アヴァロン』のロケ地であったことだ。こんなにすぐに辿り着けるとは思っていなかった。筆者の海外における過去最速のロケ地到着の一つである。同率一位は、映画『終着駅』の舞台となった空港直結のローマのテルミニ駅だ。海外での44日間の撮影は、そんなに余裕があるものだとは思わないが、街の中心、かつ、入り口で(も)行われていたのである。

写真左側に空港直結のバス停。ここは、現実パートでヒロインが奥から手前に歩いてきた場所である。看板は異なるが、撮影当時とさほど変わらない。

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振り返ると、その後の切り替わりの場面へと移る。こちらも、当時とさほど変わらない。

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特にホテルへ行くこともしないまま、続いて、ヒロインが地下鉄に降りる場面のロケ地を目指す。ここも、筆者が立っているロケ地から直ぐに目星がつけられる位置にあった。

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【04.ロケ地から見えた文化科学宮殿
この場面を少し左にずらすと、高いビルが現れる。ここが、次なるロケ地だ。ヒロインが、目指したのは、ヒロインが歩いていた方向とはざっくり反対方向だった。

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思った以上に"ランドマーク"であった

この建物の名前は、Palace of Culture and Science 文化科学宮殿。地下鉄に降りる場面の背景で見えた建物だ。麓まで行ってみると、老若男女がのんびりしている場所だった。警官に注意されている不良もいたが。スターリンによって、ソビエト連邦からのポーランド人民への贈り物としてワルシャワ市内に建設されたランドマークであり、当初は「ヨシフ・スターリン名称(または記念)文化科学宮殿」という名前だったらしい。筆者は登らなかったが、展望台にもなっている。

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建設期間の事故などによる死者は16人だったという。なんにせよ今は平和に見えた

さて、劇中の地下鉄の入り口を探すと、あっという間に発見した。
映画を再現すると、下に載せた写真のようになる。

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ヒロインは観客に背を向けながら地下鉄へ向かった

ここも意外と賑わった場所で、花売りとかもいた。目の前にある地下鉄の駅名は「Centrum」。読み方は「ツェントルム」。映画の雰囲気より、色だけでなく空気も明るく感じる。

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【05.地下鉄内部】
映画ではこの後、地下鉄内部の場面になる。そこで、実際に切符を買って降りてみる。入り口左の黄色いところが、切符販売機である。筆者は安いチケットを買って、探索が終わったら、電車には乗らずに上がる戦法をとる。

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ヒロインが立っていたあたりに降りてきた

映画で見覚えのある場所に着いた。つまり、入り口だけでなく、内部も「Centrum」駅で撮影されたことがわかる。世界でいろんなロケ地探訪をしてきたが、外部も内部も 同じ駅を撮影場所にしているとは限らない。今回は、当たりだ。「wyjście(出口)」の看板も似たような感じである。

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劇中では、車両を上から撮影していたので、足場が気になっていたのだが、普通にの歩道(といえば良いのかな)があった。

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車両の色合いも映画を思い出す

こちらが、映画を再現した写真である。電車は結構頻繁にやってくるので、撮影に失敗しても再チャレンジは容易である。お手洗いあって撮影には最適?です。

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角度を微調整しつつ、何度か撮影した。列車の動画を撮影するのも楽しい。
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ちなみにこの歩道には、店やディスプレイがあった。あまり人は来ないんじゃないかと思ったし、筆者がいた時間には閉まっていたが。
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ここには、日本のコミックを扱う場所もあった。
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ちょっと変わったセレクト?筆者が知らない作品も目立つが。

さて、続いて、観光地である 歴史地区の方へと向かうのですが、ここでもロケ地が・・・(次回につづく